加工肉と赤身肉の発がん性についての報道と、その受け止め方
10月26日、IARC(国際がん研究機関)は、加工肉を「ヒトに対して発がん性がある」、red meatを「ヒトに対しておそらく発がん性がある」に分類すると発表しました。そのニュースが、webやSNSなどでも広がっています。
「やっぱり加工品は何が入っているからわからない」
「私はベーコンも手作りしています」
というようなコメントも見かけました。
加工品だから、というのは関係ないようでしょう。というのは原料のred meatも分類されているわけですから。
この発表を聞いて、やみくもに恐怖感を感じるのはどうなのかなぁと思っていましたら、「食品安全委員会」からもこの発表の受け止め方についてでコメントが出されました。
少し長いので、私がここがポイントというところまとめますが、詳しく食品安全委員会のFacebookを読んでみてください。
まずのこの評価の前に、注目したいことは、最期に添えられていた次の文言です。
一部報道で「red meat」の和訳を赤身肉としていますが、「red meat」 は、牛肉、豚肉、羊肉などを指し、日本語でいう霜降り肉の対義語の赤身肉は「lean meat」です。
私も、なるほどと思いました。くれぐれも、脂肪が少なくてヘルシーって言われたけれど、赤身肉は発がん性があってダメだから霜降りがいいわけね、なんて思い込まないようにしましょう。
ではでは、発がん性についての話題に移ります。
ヒトに対する食品の有害影響の度合を定量的に評価することをリスク評価といい、日本では食品安全委員会が行い、海外でも各国ごとに、また国際機関などでもリスク評価を行っています。
リスクは、ハザードの毒性影響の大きさにヒトへのばく露量 (食べる量)を考慮して評価します。
一方、今回加工肉と赤身肉の発がん性について発表をしたIARC(国際がん研究機関)は、発がん物質のハザードとしての特性を中心に解析を行っている機関です。
物質の発がん性について
「グループ1:ヒトに対 して発がん性がある」
「グループ2A:ヒトに対しておそらく発がん性がある」
「グループ2B:ヒトに対して発がん性がある可能性がある」
「グループ3:ヒ トに対する発がん性について分類できない」
「グループ4:ヒトに対しておそらく発がん性はない」
に分類を行っています。
この分類は、発がん性を示す根拠があるかどうかを重視しています。
つまり、発がん性があるという根拠が十分に揃っているレベルがたばこと同じであっても、同じレベルでがんを引き起こすというお話とはまた別だということです。
食品安全委員会では、次のように示しています。
今回の評価では、これをもって、すなわち「食肉や加工肉はリスクが高い」と捉えることは適切ではないと考えます。食品のヒトの健康への影響については、前述のようなリスク評価機関におけるリスク評価を待たなければなりません。
〜略〜
食品のリスク評価は、その物質の代謝、毒性試験(短期の急性毒性、長期の慢性毒性、生殖発生毒性、遺伝毒性、発がん性などの試験)、ばく露評価など、十分なデータに基づいて予見を持たずに行われることが必要です。
がんについてはまだまだ研究が十分ではありませんが、運動はリスクを下げる評価がありますし、肥満や飲酒がたばこなども、いくつかのがんのリスクを高めることも指摘され、いろいろな生活習慣が影響しているものです。
肉を食べることにも、良質のたんぱく質を補給し、また牛肉などは鉄分が多く若い女性に不足しがちな鉄分を摂取できるなどのメリットがあります。毎日肉ばかりを食べ過ぎない、食べる時には抗酸化成分を含む野菜などもたっぷり添えるなどして、過剰な摂取にならないよう気をつけるということでよいのではないでしょうか。
いつもよく書くことですが、幅広い食品から様々な栄養成分を摂ること。それが健康のために役立ち、またリスクを分散することにもなると思います。