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子どもの頃、経済的に恵まれていない男性の方が、死亡リスクは低い?!


東京医科歯科大学は、65歳以上の高齢者を対象に子ども期の生活環境と死亡との関係について解析した結果、男性では子ども期の経済状況が低かった人は、高かった人に比べて死亡リスクが約3割低かったことを発表しました。

 

子ども期の生活環境と疾患や死亡のリスクについての研究は、多くが欧米の中年を対象としたもので高齢になってまでの影響は明らかではありませんでした。今回の研究は、日本の高齢者を対象に子ども期の生活環境と死亡との関連について、男性については7000人規模で3年の追跡調査を行い検証を行っているのは、興味深い結果と思います。

 

調査は2010年に実施した日本老年学的評価研究調査に参加した65歳以上(1945年以前に出生)の高齢者を3年間追跡して分析。子ども期の生活環境の情報がない人や、歩行・入浴・排泄に介助が必要な人を除いた男性7,143人と女性8,306人のデータを用いた。

その結果、男性では子ども期の経済状況が高い人に比べて、低い人の死亡リスクが36%も低いことが分かった。一方で女性は子ども期の経済状況の影響は見られなかった。

その理由として研究チームは、「子ども期の経済状況が低い人は高齢になる前に死亡しており、強い人だけが生き残っている可能性がある」、「子ども期の経済状況が低いほうが、丁稚奉公などにより身体的活動量が多く、肉体的に強くなった可能性がある」、「サルでは示されているように、子ども期の経済状況が低い人はカロリー摂取が抑えられていたことによって寿命が延長している可能性がある」などが考えられる、としている。そのうえで、高齢期の健康を考えるうえで、大人や高齢期になってからの環境だけでなく、子ども期の環境の影響も考慮するのが重要だとしている。

 

調査では女性も行っていますが、この結果は男性について、ですが、高齢期の健康は大人や高齢期になってから取り組めば良いというものではなく、子どもの頃の環境も影響しているのではないかと示唆しています。

 

親として子どもには苦労をかけたくない、豊かな生活をさせたい、という思いは皆あるものです。これは健康とは関係ないお話になりますが、大人になり巣立つようになると、いつまでも親の庇護のもといることはできません。人生や社会には理不尽なことも多くあり、親が守るというよりは、たくましく生き抜く力をつける、そのためのサポートをすることが親の務めなのではないかなぁと、この頃私は考えているところでした。

 

近年子どもでも食生活の欧米化や運動不足から、肥満や生活習慣病が懸念されています。「与えるだけが愛ではない」。一見豊かではない食生活や生活習慣が、実は逞しく健やかに自力で生きる力を育むことにつながっているのかもしれませんね。